多文化共生・社会教育・まちづくり 2026
しまむにのこれまでとこれから
消滅の危機にある沖永良部島のことば「しまむに」。その記録と継承への取り組みを取材し、制作の過程で幅広い人が関わるように社会教育士として工夫を凝らした。
2026年2月、沖永良部島のことば「しまむに」の保存・継承活動をまとめたレポート冊子『しまむにのこれまでとこれから―しまむにぬ なまんたに とぅ ふりから』(発行:島ムニむんちゃの島ムニ保存会)の取材・編集をオトナキ(法人)として担当しました。和泊町のアグトラスト基金活用事業補助金と、国立国語研究所の支援を受けて制作された一冊です。
「禁止」の歴史から、明るい「共創」のムーブメントへ
しまむには、2009年にユネスコによって「消滅の危機にある言語」に指定されました。かつて高度経済成長期には、都会へ集団就職する若者たちが困らないよう、学校で方言の使用を禁じる「方言札」が使われていた時代もありました。
しかし現在、島では「禁止」から「文化」への意識変化が起きています。住民と研究者が協働し、AIを使った方言学習ツールや住民主体の辞書づくりが行われるなど、眉間にシワを寄せるお勉強ではなく、「笑い合いながら共創を楽しむ」明るい継承活動のムーブメントが起きているのです。本冊子では、そんな歴史の変遷から、現在の活動を牽引するキーパーソンたちの姿までをレポートしました。
約60名のアンケートから見えた、島外からの熱視線
誌面の企画として、しまむにの未来についてウェブアンケートを実施したところ、10代から70代以上の約60名から回答が寄せられました。驚くべきことに、回答者の半数以上が島外からの回答で、その中には「島に住んでいない島ルーツの人」や「血縁のない移住者」も多く含まれていました。日常的にしまむにを使っていなくても、しまむにを愛し、自身のアイデンティティの拠り所としている人が島内外に数多くいることが浮き彫りになりました。
また、継承活動に情熱を注ぐ「しまむにむんちゃ(仲間たち)」6名(島民、沖永良部2世、研究者、小学校校長など)による座談会も企画・実施し、生きた声を収録するとともに、そうした場づくりを通したネットワーク強化や、今後の継承活動の後押しにもつなげています。
記憶を呼び起こし、アイデンティティをつなぐ
「しまむにがなくなったら、この島はえらぶじゃなくなる」。取材を通して聞いたこの言葉の通り、言語は単なる意思疎通のツールにとどまらず、先人の記憶や地域の原風景を呼び起こす画材道具のようなものです。
私自身、冊子タイトルの一部(なまんたに とぅ ふりから)の翻訳を祖母に頼むなど、制作の過程そのものが世代間のコミュニケーションとなりました。この冊子が、島内外の沖永良部ゆかりの人々を結び、未来へ向けた関係性を編み直す一つの契機になればと願っています。